これからマイホームの建築などを検討している方には、重要な項目である「斜線制限」について解説します。
「斜線制限」を理解しておくことで、「3階建てにしたかったのに2階までしか建てられない土地だった…」「3階部分が予想外に斜めになってしまった!」という失敗を避けることができます。
目次
1.そもそも斜線制限とは
マイホームを検討されている方は、不動産情報サイトなどで、「用途地域」や、「斜線制限」という言葉を何度か目にされているのではないでしょうか。
まずは斜線制限について、解説していきます。
(1)斜線制限とは?
斜線制限とは、日当たりや風通しを確保するために設定されている制限です。
地面または地面から一定の高さを基準として斜線(決められた角度の線)を引いて、その斜線を超える範囲には建物を建ててはいけない、というものです。
(2)なぜ斜線制限が必要なのか
斜線制限を無くしてしまった場合、近隣の通風や採光を無視して、日陰が大きくなるような建物がどんどん立ち並んでしまいます。すると、道路や周りの土地にも陽が当たらず、街の良好な環境を保つことができなくなります。また、道路斜線制限では、火災時にはしご車が適切に活動できるようにするためともいわれています。
そういった事態を避けるために、建物の高さや日当たりに関する様々な制限が定められています。そのうちの一つが「斜線制限」です。
(3)斜線制限の種類とは?
斜線制限は3種類に分かれています。
1つ目は「隣地」斜線制限、2つ目は「北側」斜線制限、3つ目は「道路」斜線制限です。
いずれも、道路や隣地に日陰を作りすぎないこと、風通しを確保することが目的となっています。
日当たりの良い南向きの家を建てる場合は、日陰になりやすい北側にも配慮をする必要があるため、「北側」だけは「隣地」と別に制限が設けられています。
2.斜線制限の種類と特徴
ここからは上記3種類の斜線制限の特徴や制限について、解説します。
特徴を把握していきましょう。
(1)隣地斜線制限とは
隣地斜線制限とは、隣地側に面した建物部分の高さが20mまたは31mを超える部分についてかかる制限のことです。マンションやビルなどの、比較的高い建物を対象にした斜線制限です。具体的には、20m以上の高い建物が対象になります。

(2)北側斜線制限とは
北側斜線制限とは、主に低層住居専用地域に設定され、北側の隣地に面した建物部分の高さが5mまたは10mを超える部分についてかかる制限のことです。隣地斜線制限と比べて、北側斜線制限の方が制限内容が厳しくなっています。
下記の図のような建物を建てる場合は、北側の土地に対して、日当たりを確保する形にする必要があります。

(3)道路斜線制限
道路斜線制限とは、20m~35m(一般的な住宅用地の場合)の範囲内において道路の幅員に応じて建物の高さを制限するもので、道路の向かい側から一定(1mに対して1.25mまたは1.5m)の角度で斜線を引き、その斜線に触れないように建物を建てないといけません。
また、42条「2項道路」に面した土地に建物を建てる場合は、さらに注意が必要です。
※「2項道路」とは、幅員4m未満の道路です。建築基準法では、「建物を建築する敷地は幅員(幅)4m以上の道路に2m以上接していなければならない」という規定があります(=建築基準法第43条接道義務)。今回は詳細な解説は割愛しますが、一定の要件を満たしていれば43条の接道義務を満たしていない道路でも、「42条2項道路」として建築が許可されます。
道路斜線の基準位置は、敷地前道路の反対側境界線ですが、敷地前道路が42条2項道路の場合は、セットバックした幅員4mの位置が基準位置となります。実際の道路境界線が基準位置ではありません。
道路斜線制限は基本的に、どの用途地域でも適用されます。戸建てを建築する場合は、最も大きく関わる斜線制限です。制限によって3階部分が大きく作れない、屋根の傾斜がきつくなるなどの要因となります。

(4)用途地域ごとの斜線制限一覧
すでに街として形成されている地域(市街化区域)には、「この土地は低層の住宅しか建ててはいけません」という地域や、「ここはマンションなどの高層建物を建てることができます」という地域が定められています。
その分類によって、斜線制限の有無が異なります。
表を参考に、マイホームを検討している立地を確認してみましょう。
絶対高さ制限 | 隣地斜線制限 | 北側斜線制限 | 道路斜線制限 | |
第1種低層住居専用地域 | 10mまたは12m | – | ○ | ○ |
第2種低層住居専用地域 | 10mまたは12m | – | ○ | ○ |
第1種中高層住居専用地域 | – | ○ | ○ | ○ |
第2種中高層住居専用地域 | – | ○ | ○ | ○ |
第1種住居地域 | – | ○ | – | ○ |
第2種住居地域 | – | ○ | – | ○ |
準住居地域 | – | ○ | – | ○ |
田園住居地域 | 10mまたは12m | – | ○ | ○ |
近隣商業地域 | – | ○ | – | ○ |
商業地域 | – | ○ | – | ○ |
準工業地域 | – | ○ | – | ○ |
工業地域 | – | ○ | – | ○ |
用途地域の指定なし | – | ○ | – | ○ |
4.その他の制限
ここまで、斜線制限について解説してきました。そのほか関連性のある制限を少しご紹介します。
(1)絶対高さ制限
上記の表にも記載されていますが、「絶対高さ制限」という規制があります。
低層住宅を建てるべき地域では必ず10mまたは12mという制限が課せられており、それ以外の地域でも制限がかかっているケースがあります。この高さを超える建物の建築はできません。
ただ、3階建ての高さは9~10m程度ですので、一般的な戸建てであれば、あまり気にする必要はありません。
5.まとめ
今回は3種類の斜線制限について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
この記事を読むことで、建築の参考になりましたら幸いです。
今回解説した内容は建築に関する制限の一部です。また、自治体ごとに別途制限や緩和を行っているケースもありますので、購入を検討される際には、検討している物件について、信頼できるプロの不動産会社に相談しましょう。